【静岡新聞7月9日夕刊より】
「田んぼの土から器を作ることができるか」「水田に種を直接まかず、苗に育ててから移植するのはなぜ」。陶作家や米農家など現代の〝ものづくり〟の専門家らが素朴な疑問から実験を重ね、先人たちの知恵を見直す連続講座が静岡市駿河区の登呂遺跡と登呂博物館で行われている。
「土器の底に葉脈の模様があるのは、葉を下に敷いて器を作っていたからではないか」。5月に行われた初回講座では、陶作家の本原玲子さん(同市清水区)が立てた仮説を試した。
葉の上に器の底面を作り、その上にひも状の土を重ねていく。葉が摩擦を減らし、器が手の動きに合わせてなめらかに回転すると「ろくろのようで作りやすい」と驚きの声が上がった。
底面に葉の模様がある「木葉底」は、縄文・弥生時代の土器に見られる。登呂遺跡から出土した20点以上にも痕跡があるという。
一貫したテーマは「土」。本原さんは「土さえあれば、器も食べ物も得られる。田植えや野焼きなどを一連の流れとして実験し、当時の工夫を見直したい」と意図を語る。 講師は他に、米店店主の長坂潔曉さん、米生産者の青木嘉孝さん、土笛研究家の菊池保朗さん。
登呂博物館のワークショップ運営ボランティアなどを行う市民有志「登呂会議」が企画した。11月までの全7回講座。途中回からの参加は不可。活動記録は登呂博物館ミュージアムショップのウェブサイト内で閲覧できる。
