わたしの口に刺身が届くまで

2014年9月30日火曜日

workshop

t f B! P L

 2006年から、専門学校で毎年「私の口に刺身が届くまで」という授業をやっている。

授業を始めたきっかけは、父方の祖母が101歳で亡くなった時のこと。
富士市の浜のほうの出身で、口がわるかった祖母は入院中、看護師さんが寄って来るだけで「いてゃーっ!」と言うし、「こんなまじいもん食えねぇ」って吐き出した。そんな祖母が自分の口で食べられなくなり、点滴になったとたん、3日で逝ってしまった。噛んで食べることの大切さを思い知った。

授業は、5人1グループで「私の口に刺身が届くまで」を図解する。3年くらい前から、魚がセックスをしている。5人もいて、誰も疑問に思わない(翌週、そういう魚もいると調べてきたけれど)。まず、人が魚を釣っている絵を描く。魚網での漁も、それがどのくらい遠い海なのか、どこなのかは誰もわからない。魚市場に来てからは、競りをするひと、競り落とす人、店まで魚をトラックで運ぶ人、スーパーに至っては、切る人、パックする人、と妙に細かくなるけれど、刺身を食べるのにお金を払うのは、毎年1グループだけ。今のお父さん、マンモス背負って帰って来ないしね。親の稼ぎは給料袋で現金支給でもなく振込だけど、刺身は自動的に自分の前には現れない。

「海で魚釣って、海に100円投げないでしょう?じゃ、価値って何?値段て何だろ?」と聞くと、「人件費」と即答する。「じゃ、わたしが切った刺身と板前さんの切った刺身は何が違うの?」と尋ねると「技術…?」と言う。アタマで知ってるんだね。

様々な食べ物が自分の口に入るまでのプロセスに思いを馳せて、想像する。目の前にあるものがどんな生い立ちでここに在るのか知ろうとすると、いろんなことが見えて来る。

このあと、学生はそれぞれ気になったことを掘り下げていく。水がただのようにジャージャー使ってたけど、電気を使わないと水は家に来ないの?と気づく子もいれば、刑務所の食事は素晴らしい栄養バランスで美味しいそう!と、各刑務所の人気メニューを出す食堂の提案をする子も出た。日本人には海藻を分解する菌がお腹にいると初めて知って、チョコとコーヒーばかり食べてることを反省したり。日本の食物自給率を調べたら39%。100%自給できるのはフキやせりのような草みたいなものでこれじゃ勝てない。。と言う子もいた。この「勝てない」は、戦争が起きたら肉を食べてる国の人には敵わないと言う意味だった。実際、もし兵糧攻めにあったら、日本は最新兵器より先に多くの人が餓死すると思う。

学生さん、「生きるために、食べてない」なんて言うんだよ。
何やるったって、身体あってのことだと思う。



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